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経済

『円安のせいで物価高になっている』は間違い?本当の原因を解説

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hachikundaisuki8
兄さん
兄さん

最近、円安で物価高が止まらないね…

はちくん
はちくん

実は最近の物価高は、円安が原因ではない可能性が高いんだ!

スーパーに行くたびに、「また値上げだ」と感じる方も多いと思います。

そんなとき、テレビやネットでは「円安だから物価が上がっている」と言われることがよくあります。

確かに、2022年前後には急激な円安が進み、そのタイミングで輸入品の価格が大きく上昇しました。

しかし、多くの人が勘違いしている事実があります。

それは「最近は為替(ドル円)はそこまで大きく動いていない」ということです。

もし「最近の物価高=円安が原因」という説明だと、今の日本で起きている現象の重要なポイントを見逃していることになります。

この記事では、政府機関が出すデータを中心に、近年続く物価高の原因についてわかりやすく解説します。

以下に該当する方はぜひ最後までご覧ください。

こんな人におすすめ

ニュースや社会の動きに興味がある人
物価高の原因について知りたい人
円安(だけ)が原因で物価が上がっていると思っている人

そもそも円安とは?

本題に入る前に、
「そもそも円安って何?」
「円安についてしっかり理解できていない」

という方も少なくないと思います。

簡単に言うと、円安とは「1ドルを買うのに必要な円の数が増えること」です。

例えば、1ドル=100円だったのが、1ドル=150円になると、同じ1ドルの商品を輸入するのに、前よりも多くの日本円が必要になります。

その結果、輸入品の価格が上がりやすくなります。

ただし、「円安」と一言で言っても、

  • なぜ円安になるのか
  • 円安にはメリット・デメリットがあること
  • 輸出企業と輸入企業、家計への影響の違い

など、理解するには様々な観点から捉える必要があります。

円安そのものの仕組みやメリット・デメリットについては以下の記事で解説しているので、それらについて知りたい方はぜひ読んでみてください。

ここでは、「円安になると輸入品の価格が上昇しやすくなる」というポイントだけを抑えた上で、本題である「近年の物価高の原因」に話を進めていきます。

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物価の推移

消費者物価指数とは

まず、「物価が上がっている」とは、具体的に何が上がっていることを指すのでしょうか?

ここで、ニュースなどでよく出てくるのが「消費者物価指数(CPI)」という指標です。

消費者物価指数とは、「一般の家庭が普段飼っているモノやサービスの価格が、全体としてどれくらい変化したか」を示す指標で、総務省統計局が毎月公表しています。

これによって、
・2020年の物価水準を「100」としたときに、今の物価は「いくら」になっているのか
・前年の同じ月と比べて、何%上がった(または下がった)のか

を知ることができます。

消費者物価指数の推移

以下は政府が公表している消費者物価指数の推移をグラフにしたものです。

消費者物価指数(生鮮食品を除く総合) 2020=100

このグラフでは「生鮮食品を除く総合」の指数が使用されています。

生鮮食品の価格は「定価」のようなものがあまりなく、天候要因などによって短期間で大きく乱高下してしまいます

そのため物価の動向を調べるのにそれを含めると、経済の実体と乖離していまう可能性があるため排除している指標です。

このデータを見ると、2021年の途中までは消費増税を除くと前年同月比(1年前の同じ月と比べた変動率)がマイナスになることが多くありました。

しかし、2021年の中から後半ごろにかけて、消費者物価指数の前年同月比がプラスに転じ、その後プラス状態がずっと続いていることが分かります。

さらに、2026年4月時点でのデータを見ても、総合指数は+1.4%と、依然としてプラス(=物価上昇)となっています。

※棒グラフは「前年同月比」なので、プラスになっている時点で物価が上昇していることを表しています(たとえその上昇率が下がっていても)。

つまり、物価上昇は「一瞬の出来事」ではなく、2021年後半から2026年の4月まで、長い期間にわたって続いているということが統計データから確認できます。

為替レートの推移

次に円安と言われるときに代表的に見られる「ドル円レート」の動きと、輸入物価の推移を確認します。

その二つを重ねた図が以下の通りです(内閣府より)。

為替レートと輸入物価指数の推移(2020年=100)
為替レートと輸入物価指数の推移(2020年=100)

このグラフを基に、順番に説明していきます。

ドル円レートの動き

まずは、ドル円レートの動きについて見ていきます。

※ちなみに、上記の図は2020年の値を100として出しているものであって、2020年が1ドルピッタリ100円だったという訳ではありません。

政府が発表しているデータによると、2022年代にかけて急速に円安方向へ進み、2020年と比較してドルの価値が円に対して約1.5倍(円安)になっていることがわかります。

この時期は、アメリカが急速に利上げを進めた一方で、日本は低金利政策を続けていたため、日米の金利差が拡大し、「円を売ってドルを買う」動きが強まったことが背景にあると考えられています。

輸入物価の上昇

先ほど説明した通り、2022年の後半ごろまでは「一気に円安が進行した時期」と言うことができると思います。

そして、このタイミングで輸入物価(海外から買ってくるモノの価格)は大きく上昇しました。

このことは青色の輸入物価指数の推移を見るとわかります。

つまり、

  • 円の価値が下がる(円安)
  • 同じドル建ての輸入品を買うのに、より多くの日本円が必要になる
  • その結果、輸入品の円建て価格が上がる

という、メカニズムが強く働いた時期だと説明することができます。

この頃の物価高について、「円安が原因だった」と言うのは、かなり妥当な説明です。

実際、エネルギー価格や食料品など、輸入に依存する品目の価格が大きく上昇していました。

直近

しかし、2022年後半以降のドル円レートを追っていくと、確かに水準としては2020年から見て「円安」ではあるものの、2022年までのような急激な変動は落ち着き、一定の範囲内で留まっていることが分かります。

同時に、輸入物価指数の推移を見ると、2022年頃に大きく上昇したあと、2023年以降は上昇が落ち着き、前年比でマイナスになる年も出てきていることが確認できます。

つまり、

  • 為替レート:2022年までのような「急激な円安」は一旦落ち着いている
  • 輸入物価指数:2022年に大きく上がった後、2023年以降は落ち着き、マイナスの年もある

という状況です。

それにもかかわらず、消費者物価指数の前年同月比はプラスが続いている。

ここから、「最近の物価高は、円安だけでは説明できない」という結論が自然に導かれます。

物価高の正体

GDPデフレータとは

ここからが本記事の核心部分になります。

「物価」と一口に言っても、実は指標はいくつもあります。

その中で、国内全体の物価動向を広くとらえる指標として重要なのが「GDPデフレータ」です。

GDPデフレータとは、「”国内で”生産されたモノやサービス全体の価格水準」を示す物価指数のことです。

消費者物価指数と混同しがちですが、

  • 消費者物価指数:家計が購入するモノ・サービスの価格
  • GDPデフレータ:「国内で」生産されたモノ・サービス全体の価格

という違いがあります。

つまりGDPデフレータの場合、
「国内」に限定されているため、円安で輸入物価が上昇してもその分を取り除いて数値を出すので、その部分は反映されていないデータということになります。

GDPデフレータと輸入デフレータの推移

次に、GDPデフレータと輸入デフレータの推移を見ていきます。

GDPデフレータ(左軸)と輸入デフレータ(右軸)の推移
GDPデフレータ(左軸)と輸入デフレータ(右軸)の推移

このデータを見ると、大まかに次のような傾向が読み取ることができます。

輸入デフレータ
2021年~2022年頃にかけて大きく上昇している。
その後は上昇が落ち着き、年によっては前年比マイナスになることもある。

GDPデフレータ
2022年の後半からプラスに転じ、
それ以降は一貫して前年比プラスの状態が継続している。

つまり、
輸入価格の上昇(輸入デフレータ)は落ち着いてきているのに、国内全体の物価(GDPデフレータ)は上昇し続けているという構図になっています。

これは、「最近の物価高の原因は、輸入品だけではなく国内要因が大きくなっていること」を示唆しています。

円安が原因ではない理由

ここで今までの説明を整理しておきます。

円安による物価上昇は、「輸入品の円建て価格が上がること」が主なルートです。

しかし、為替レートがある程度落ち着き、輸入デフレータの上昇も一段落しているのに、物価全体が上がり続けているのであれば、「円安以外の要因」が働いていると考えるのが自然です。

言い換えると、
「円安が原因なら、円安の進行が止まり、輸入価格の上昇も落ち着いた段階で物価上昇も落ち着くはずだ」ということです。

それでも物価上昇が続いているということは、国内で何か別の要因が物価を押し上げているということになります。

考えられる国内要因

供給能力の不足

「供給能力の不足」とは簡単に言うと、
「欲しい人の数に対して、モノやサービスを供給できる量が足りていない状態」のことを言います。

例えば、最近のお米の例を考えてみましょう。

数年前、米が不足状態に陥り、一時期はスーパーに出回らない状態になったこともありました。

この原因は

  • 高温などで収穫量が減少したこと
  • インバウンド需要や家計購入量が増加したこと

によって、供給能力が需要に対して不足したためだと考えられています。

これは私が勝手に言っている訳ではなく、実際に農林水産省が公表している情報です。

農林水産省の主張
米価高騰の要因(農林水産省)

これによって、米を欲しい人はたくさんいるのに、市場に出回る米の量が十分でない、という状況が起こります。

その結果、インフレ状態(需要>供給)になり、価格が上がることに繋がります。

消費者物価(全国)の推移(総務省消費者物価指数)
消費者物価(全国)の推移(総務省消費者物価指数)

実際に、ここ最近の物価上昇の内訳を見てみると、明らかに米類の上昇が他の品目に比べて物価の上昇が大きいことが分かります。

つまり、供給能力の不足が物価上昇に強く結びついている、ということがこのデータから読み解くことができます。

また、人手不足によるサービス価格の上昇など、国内の「供給側」の制約が強まると、輸入価格が落ち着いても、物価全体が上がり続けることに繋がります。

賃金・サービス価格の上昇

もう1つ重要なのが、賃金やサービス価格の上昇です。

GDPデフレータは、モノだけでなくサービスも含めた「国内生産全体の価格」を見ています。

サービスは人件費の割合が大きいため、賃金が上がれば、サービス価格も上がりやすくなります。

最低賃金(全国加重平均)の引上げ額と引上げ率の推移
最低賃金(全国加重平均)の引上げ額と引上げ率の推移(厚労省)

上記の表は最低賃金の推移を示したものになりますが、
近年、日本でも賃上げの動きは加速しています。

そして、それに伴って外食や各種サービスの価格が上昇しているケースが増えていると考えることができます。

企業規模別・業種別の労働分配率
企業規模別・業種別の労働分配率

上記の図は企業規模別・業種別の労働分配率を表したものです(内閣府より)。

実際に、中小企業の労働分配率は80%を超えるような状況であり、最低賃金が引き上げられても、その分を出すお金が会社側に残っていない可能性が十分に考えられます。

その場合、商品価格に上乗せする必要があり、結果として物価上昇の原因になってしまいます。

おわりに

ここまで見てきたように、「円安で物価高になっている」という説明は、2022年ごろまでについてはかなり正確な表現である一方で、それ以降の物価高を説明にするには不十分であることが、政府のデータからも読み取ることができます。

  • 2021年後半から、消費者物価指数は前年同月比でプラスが継続
  • 2022年までの急激な円安と輸入デフレータの上昇は物価高の大きな要因だった
  • しかし、その後為替や輸入デフレータの上昇が落ち着いても、GDPデフレータや消費者物価指数の上昇は続いている

このことは、「現在の物価高の正体は円安ではなく、国内の供給能力やコスト構造の問題である」ということを示しています。

物価は、私たちの生活そのものに直結するテーマです。

そして、その物価に大きな影響を与える「経済政策」や「財政政策」を決めているのは政府であり、国会であり、その構成員を選んでいるのは、私たち有権者です。

だからこそ、今回解説したような知識を知ることは、決して専門家だけの話ではなく、私たち一人ひとりの生活と未来にとって大切な行動だと言えると私は思います。

はちくん
はちくん

この記事が皆さんの参考になれば幸いです^^

< 出典情報 >
総務省:https://www.soumu.go.jp/
内閣府:https://www.cao.go.jp/
農林水産省:https://www.maff.go.jp/
厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/index.html

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