税は財源じゃない!? その理由・仕組みをわかりやすく解説

税収は過去最高かもしれないけど、国家予算の方が大きいんだから、税金が足りてないんだよね…?

実は、政府は税金を使わずに支出しているから問題ないんだ!
「政府は税金を国民から集めて、その税金を使って公共サービスを提供している」
おそらく、多くの人がこのようなイメージを持っているのではないでしょうか。
家計の感覚に当てはめれば、それは自然な発想です。
収入があって初めて支出ができる、私たちの日常はこのように回っています。
そして政府も同じような仕組みでお金を運用していると考えてしまいがちです。
しかし、実はここに重要な違いがあります。
政府は税金を集める前に支出をしているんです。
この記事では、税金が財源ではない理由から、それでも税金が必要な理由までわかりやすく解説します。
ニュースや社会の動きに興味がある人
税金がないと政府は支出できないと思っている人
「税は財源ではない」の意味を理解したい人
そもそも「財源」とは
まず、議論の土台となる「財源」という言葉の意味を、はっきりさせておきます。
財源とは、文字通り「財政支出の源」、つまり何かにお金を使うための、あらかじめ確保されている元手のことを指します。
私たちの家計に置き換えるとイメージしやすくなります。
買い物に行って1万円の商品を買いたいなら、給料等の収入として1万円がすでに手元にあるという状況が必要になります。
給料という「財源」が先にあって、それを元手に支出が行われる。
これが私たちが日常的に体験している「財源」のイメージになります。
問題は、この「収入が先、支出は後」という家計・企業の感覚を、国の財政にも当てはめて良いのか、という点です。
次の章から、実際の国の予算と税金の時間間隔を確認していきます。
税収が入る前に支出している
結論から言うと、国の予算は「家計や企業の財源」とは違う順序で動いています。
政府はその年の税収が実際にいくら集まるかが確定するよりも、はるかに前から支出を始めています。
以下では、その流れについて確認していきます。
予算の決定
日本の国家予算は単年度予算と呼ばれ、
毎年度、次のようなスケジュールで作られています。
まず財務省が各省庁に対して、
翌年度の予算要求の上限を示す方針を7月頃に閣議で了解します。
これを受けて各省庁は、8月末までに「来年度はこれだけの予算が欲しい」という要求(概算要求)を財務省に提出します。
そこから9月~12月にかけて、財務省が各省庁と折衝しながら査定を行い、年末に政府としての予算案が閣議決定されます。
この予算案は、年明けから始まる通常国会で審議され、年度末までに成立するのが通例です。
予算の執行
予算が成立すると、4月1日という新年度の初日から、その予算の執行(=支出)が始まります。
年金の支払や公共事業、社会保障給付、公務員の人件費など、私たちの生活に関わる様々な支出が、4月1日をもって一斉にスタートするのです。
ここで重要なのは、この予算案に計上されている「税収」の金額は、あくまで見積もり(予測)に過ぎないという点です。実際にその年度でいくらの税金が集まるかは、予算を組んでいる時点では、まだ誰にもわかりません。
そして、政府が支出を始める4月1日時点では1円たりとも税金は納められていないのです。
納税額の確定
では、私たち国民の税金は、いつ「確定」するのでしょうか。
ここに予算の執行のタイミングとの大きなズレがあります。
会社員などの給与所得者の場合、毎月の給与やボーナスから所得税が天引きされていますが、これはあくまでも概算になります。
1年間の正確な税額は、年末調整によって精算されます。
また、個人事業主のように年末調整の対象とならない人は「確定申告」によって税額を確定させます。
この確定申告の期間は、原則としてその年の翌年の2月16日から3月15日までと定められています。
つまり、国民の納めた税金の額が最終的に確定するのは翌年3月(確定申告)になります。
税収の確定
さらに話は続きます。
私たち国民が納税を完了しても「国全体で、その年度の税収が合計いくらだったか」という決算数値として確定するまでには、もう少し時間がかかります。
この、年度が終わった後も収入・収支の事務整理を続けられる期間のことを「出納整理期間」と呼びます。
具体的には、
- 4月1日~5月31日:現金の出納そのものを完了させる期間
- 6月1日~7月31日:帳簿上の整理・確定を行う期間
という2つの段階を経て、ようやくその年度の収入・支出が最終的に決定します。
実際に、財務省が「令和7年度一般会計税収の予算額と決算額(概数)」を公表したのは、令和8年7月3日でした。
つまり国の財政は、支出が先に決定・実行され、税収は後から積み上がって金額が確定するという順序で動いているのです。
ここまでの流れをまとめ図が次の通りです。

歳出のお金の源
ここで「税金が入ってきていないのに、政府が支出しているお金はどこから来ているのか」という疑問がわきます。
答えは、基本的に政府が発行する国債になります。
政府は4月から予算の執行を始めますが、その際に政府が発行した国債(借用証書)を民間銀行が購入します。
それによって資金を得た政府は、公共投資や公務員給与の支払いといった支出ができるようになるということです。
実際に、コロナ禍で行われた「国民一人当たり10万円の給付金」は、一切増税することなく給付されました。
もし政府の支出に税金が必要であれば、支出する前に増税をする必要が出てきます。
こういった事例からも、日本政府の財源は国債(通貨発行)ということが分かります。
「国債を発行しすぎると財政破綻する」と言われることがありますが、これは誤った説明になります。
日本政府が発行する国債は全て「自国通貨(日本円)建て」で行われており、債務不履行・利払い不能状態に陥ることは理論上ありえません。
そして、財務省も「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と主張しています。
詳細については以下の記事で解説しています。
興味がある方はぜひご覧ください。

税金は不要なのか
ここまでの説明を聞くと、
「税金がなくても政府が支出できるなら、税金なんて払わなくても良いのでは」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、それは誤解です。
なぜなら、「税が支出のための元手(財源)ではない」ということと、「税金が不要である」ということは、全く別の話だからです。
税金に「財源としての役割」がなかったとしても、別の大切な役割を持っています。
税の役割①:景気調整機能
景気が過熱し、人々の所得や消費が増えると、
インフレ(需要>供給)になります。
その状態が行き過ぎると、物価が急激に上がり、社会・経済に混乱を生じさせます。
それを防ぐために税金が必要になります。
徴税によって市場の貨幣供給量を減少させ、需要を縮小させるのです。
このように、税にはインフレを抑制する役割があります。
税の役割②:政策手段
税を利用することで、政府は国民を望ましい方向へ誘導することが可能です。
例えば、政府が「タバコは健康に悪いから、喫煙者を減らしたい」と考えたとします。
すると、政府が取れる有効な手段として「タバコ増税」が挙げられます。
タバコにかかる税金が多くなると、国民にとってタバコを吸うコストが大きくなり、喫煙者は減少すると考えられます。
エコカー減税はこれと逆の仕組みです。
エコカーを普及させるために、エコカー購入者にインセンティブを与えます。
格差の縮小
仮に税が存在しない世界だったら、お金持ち(一族)は富を増やし続けることになります。
所得の多さは運によって決まる側面も強く、これを放っておくと貧富の差が大きくなります。
そして、お金持ちは自らの資金を使って投資をし続けることができるため、さらに富を拡大していくことに繋がります。
もちろん、全員が同じ所得になるのは不公平感を生み、望ましい形とは言えませんが、行き過ぎた格差社会は世の中を不安定にさせます。
それを防ぐために、高所得者に対して高い税率をかけ、低所得者に対しては低い税率をかける必要があるのです。
まとめ
今回は「税は財源ではない」という意味について説明しました。
財源とは支出の前提としてあらかじめ確保されている元手のことであり、政府にとって税はこれに当てはまらない。
政府の支出は4月1日から始まり、資金繰りは国債発行で賄われている。
私たちの税金は、年末調整や確定申告を経て確定し、国全体の税収決算が確定するのは翌年度の7月である。
税の役割は財源ではなく、「景気調整機能」「政策手段」「格差の縮小」等の役割がある。
おわりに
税金や財政の仕組みは「難しそうだから」と敬遠されがちなテーマだと思います。
しかし、この記事で見たように、予算が決まる時期や私たちの税金がいつ確定するのかといった情報は国が出している事実です。
そして、この予算がどのように使われるかを最終的に決めているのは政治家であり、その政治家を選んでいるのは、他でもない私たち国民です。
「財源はどうするのか」という問いかけをSNSやニュースで耳にしたとき、それが本当に議論すべき論点なのか、それとも別の角度から考える必要がある問いなのか
この記事が、そういった視点を少しでも持つきっかけになれば幸いです。

この記事が皆さんの参考になれば幸いです^^
< 出典情報 >
財務省:https://www.mof.go.jp/

